今日も咲くらで

院長ブログ

2019.07.16

徒然日記

あっちゃん

開業してまだ数年の頃。

毎週のようにお母さんに連れてこられる小学生の女の子がいました。

なんの処置だったか。イボを焼く処置だったかな。

お母さんはいつも忙しく働いていらっしゃるようでした。

そのためかお母さんに少し余裕がなかったのでしょうね、お母さんは子供には厳しめです。

その子の大人の顔色を伺うような今にも泣き出しそうな表情は今でも忘れられません。

 

「あっちゃん、今日はどうしたの?」

 

初めはあんまりお話もしてくれなかったのですが何度も話しかけているうちにあっちゃんは学校のこととかいろんなことを少しずつ話してくれるようになりました。

でもなんだか不安げな寂しいような雰囲気を感じます。きっと大人の事情がこうさせているんだろうな、と診察をしながらぼんやりと考えていました。

だからいつも来るたびに「あっちゃん、元気?」と努めて明るく声をかけるようにしていました。

 

良い大人になってもらいたくて。

 

僕にも慣れてくれて小学生の頃はよく来てくれていましたが、中学生ごろになるとあまり見かけなくなりました。

いつぞや見た姿は男の子とバイクの二人乗り。思春期の反抗期というものだったのでしょうか。それを最後にあっちゃんの姿を見なくなりました。

 

僕の記憶が薄れたころ、突然あっちゃんが外来にやってきました。

 

今度はなんと赤ちゃんを連れて。診察は本人ではなく赤ちゃんのほうです。

しばらく見かけないうちにあっちゃんは若くして結婚し、子供にも恵まれていたのです。

咲くらのことをずっと忘れずにいてくれたことがとても嬉しかったことを覚えています。

 

あっちゃんが手に入れた幸せそうな家族の姿を見て、あっちゃんが小学生の頃をふと思い出しました。

旦那さんと可愛い子供に囲まれて素敵な笑顔を見せてくれたあっちゃん。

あの寂しそうな泣き出しそうな顔をした女の子の思い出は今ではすっかり遠い記憶です。

 

長年開業医をやっているといろんな患者さんの人生が見え隠れいたします。

皆さんの人生とともにある、これが開業医の醍醐味なのかもしれません。

これからも皆さんの幸せな姿が見れるように日々努力したいと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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