今日も咲くらで

院長ブログ

2022.10.10

診療室から

意外に多いニキビダニ(顔ダニ)。30代以上の顔の治らないぶつぶつには要注意。

今日の勉強

 

34歳女性。


顔中に少し痒みがある皮疹が多発しています。皮疹は顔だけに限局しています。

 

近所の皮膚科に行ったらニキビです、といわれてクリンダマイシンを処方されました。塗ったところは少し引くけれどなおりきることはなく、ずっと痒みが続いていました。

 

2軒目の皮膚科に行ったら湿疹と言われ、ロコイド軟膏やコレクチム軟膏を処方されました。一瞬治った気がしましたがすぐに繰り返してしまいます。

 

といって当院にやってこられました。

 

さて、これはいったいなんでしょう?
当院ナースはこれをみてすぐに検査の用意ができたら一人前です。うちのナース13人中10人は正解するかな。








正解はニキビダニ。顔ダニとも言われます。

少し考えを書いていきましょう。


まず普通のニキビでしょうか?ニキビの年齢は通常10代から20代です。


30代でもニキビはできなくはないですが少し好発年齢から外れています。あとニキビではかゆくなることは少ないです。写真からはニキビにしてはだいぶ細かい皮疹ですね。

 

湿疹でしょうか?
確かに痒みがありますので湿疹の診断をしてしまいそうです。

ステロイドも出されていますがイマイチしっくりきていないようです。化粧品による接触皮膚炎という考えもありますが、接触皮膚炎にしては皮膚炎がマイルドすぎます。
本物の接触皮膚炎は腫れ上がるほど強い皮膚炎のことが多いかと思います。

またおでこに注目すると皮疹は比較的左右対称で眉間付近のいわゆる脂漏部位に集中しています。接触皮膚炎ではこう綺麗にはいかないですね。

 

ここの時点でニキビダニかも、と想像できれば100点です。

 

検査は少し痛いですがピンセットで膿をもった箇所をつまんで採取し、顕微鏡でみます。

そうしたらニキビダニが数匹確認できるはずです。多い時は一つの毛穴に3−4匹顔をつっこんでいるのが見えます。

ニキビダニはニキビダニ科ニキビダニ属に属する節足動物。つまりが虫。

体長0.2−0.3mm。頭胸、腹があり、足が8本ついています。クモと同じ形態ですね。

毛穴の皮脂を食べて毛穴に住んでいるので毛包虫とも言われます。

 

ニキビダニは昼間は皮脂を食べて生活し、夜は皮膚の上で交尾をして繁殖します(皮膚の上で。やめて欲しい。笑)

 

寿命は2週間ほど。昔は肛門をもたず、食べすぎて死ぬと考えられていましたが最近の研究で肛門が確認されたそうです。

 

ニキビダニが皮膚炎を起こす原因は、ニキビダニそのものに対する免疫反応よりもニキビダニのフンや内在細菌などに対する免疫反応といわれています。

 

ニキビダニがいては絶対ダメということはないのですが、存在することで余計な皮膚炎をおこしたりするのがマイナス点。

 

治療はミノサイクリン内服(1日100mgで十分)とロゼックス外用です。ステロイド、コレクチム、プロトピック等は全部やめましょう。

誤診していなければ約2ヶ月で完治します。早いと写真のように1ヶ月。誤診してステロイドを塗っていたらやめさせてから4ヶ月くらいかかるケースもあります。

 

 

ニキビダニ症は、ぱっと見は普通のニキビや湿疹にみえなくもないので結構誤診が多いです。

うちには週に何人もこういう相談がやってきます。だから僕はすっかりニキビダニ博士になりました。

 

30代以降のこういう皮疹(痒いことも痒くないこともある)ではニキビダニの可能性を常に頭にいれましょうね。

ちなみに10代、20代では通常のニキビばかりで不思議とニキビダニはほとんど見られません。

 

患者さんから学ぶことは多いですね。

 

 

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