今日も咲くらで

院長ブログ

2021.01.15

診療室から

湿疹はそのほとんどがアレルギーの結果ではない。

年末年始には重症の湿疹、アトピー患者さんが大勢やってきました。

 

見ると相当ひどい湿疹であるにもかかわらず、強さが適切でないお薬が処方されていたり、全身の皮膚炎にもかかわらず異常に少ない量が処方されていたりしていました。

 

通常治らない時にはまず外用剤の強さ塗り方、さらには内服の強さを見直すことになるのですが、なかなか治らないことに業を煮やしてか、投薬の見直しをすることなくアレルギーの血液検査をフルコースされていたりするケースがありました。

 

湿疹=アレルギー、という図式は基本的には成り立ちません。

 

通常のアレルギーとは即時的反応が主体です。これはつまり原因の食品などを摂取すると数分から数時間でなんらかの症状が現れることを言います。すぐ症状が出ますので誰の目にもわかりやすいのがアレルギー性のものと考えていただいて構いません。即時型アレルギーはオンとオフがはっきりしています。当該物質を摂取すると症状が出現し、接触しなければ症状は出ないわけです。

 

ところが湿疹は多因子による病気です。仮にアレルギーが関わっている場合では主に遅延型反応と言いまして、だいぶ時間が経ってから症状が出現するものなので、通常かんたんなアレルギー血液検査(通常即時型を調べる検査です)では湿疹の原因は突き止めることができません。

 

つまり、湿疹の原因がアレルギー血液検査でわかることはほぼない、というのが私たちの見解です。

 

実際に過去数百人にのぼる湿疹症例を集めて、アレルギーの血液検査陽性の患者さんに陽性物質の徹底除去をお願いしたこともありますが、結果ごく一部をのぞいてほぼ誰も改善しなかった、という実例から当院では湿疹に対するアレルギー血液検査は推奨していません。

 

もし湿疹に対するアレルギー検査をするのであれば皮膚に貼り付けるパッチテストはまだ意味があるものと思います。実際アメリカの皮膚科の教科書にもそう記載があります。

 

残念ながら小児の湿疹に対しても同様のことが広く行われているようで、治りにくい湿疹があるとすぐにアレルギー血液検査という施設もあります。採血で痛い思いをしてもそこで得られる情報はわずかなものであり、症状を改善させる効果もなく、当院としては全く推奨しません。

 

またアレルギー学会に所属の先生方はよくご存知かと思いますが、

 

「湿疹はアレルギーが直接原因で出現するわけではありません。逆に湿疹を放置しておくと壊れた皮膚からアレルギー物質が侵入し、各種アレルギー疾患の元になる」、というのが現在の見解です。

 

ですから湿疹は放置せずすぐに治す、治した後はなるべく再度症状が出てこないように維持に務める、これが重要かと思います。

 

 

 

 

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