院長ブログ

茶のしずく石鹸の事件から学ぶアレルギー発症のキーワード

茶のしずく石鹸の事件から学ぶアレルギー発症のキーワード

2011年2月21日読売新聞より一部抜粋

化粧品販売会社「悠香(ゆうか)」(福岡県)が手がける「茶のしずく石鹸(せっけん)」の旧製品で小麦アレルギーを発症したとして、京都府内などの女性17人が、石鹸の製造会社と原料メーカーの2社に製造物責任(PL)法に基づき計約1億2,000万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が20日、京都地裁であった

当クリニックでは、この事件からアレルギー発症と皮膚には密接な関係があると考えるに至りました。

茶のしずく事件とは

茶のしずく石鹸事件とは、当石鹸で洗顔を行っていた人が次々に重篤な小麦アレルギーを発症した、という事件です。2011年に発覚して以来、被害者総数2,000名以上を出した大事件でした。

事件をもっと詳しく説明しますと、当石鹸の使用に伴い石鹸に添加されていた小麦の加工物「加水分解コムギ」というタンパク質(グルパール19S)にアレルギー反応を起こし、結果小麦を含む食品を摂取すると重篤なアレルギー症状を起こすようになった、という事件です。

患者さんは、今までは普通に小麦製品が食べられていたのに茶のしずく石鹸を使用したことで、ある日突然小麦アレルギーを発症するようになってしまったのです。

アレルギーを発症する原因とは?

「ん?なんで石鹸で顔を洗っただけで小麦のアレルギーになるの?」

「石鹸を食べたわけでもないのにどうしてアレルギーになるの?」

と当時は私も含めてみんなの頭の中は??だらけでした。

しかしこの事件をきっかけに医学界には新しい概念が生まれたのです。

「食品アレルギーは食べて発症するわけでなく、皮膚からアレルゲンが侵入してアレルギーを発症するのではないか」

離乳食前の赤ちゃんにアレルギー検査をすると卵や乳などにアレルギー反応が見られることがあります。

「どうして固形物を食べていないはずの赤ちゃんがアレルギーを発症するのか?」という問いに対し、昔は「母乳のせいだ」とか「妊娠中の食事のせいだ」などと考えられていました。ですから当時は母親の食事からアレルギー物質を除去する、ということが当たり前のように行われていました。

でもおかしなこともありました。母乳を一切もらっていない離乳食前の児にもアレルギー反応が見られたのです。当時はどのように説明してよいかわからず困惑してしまったこともありました。

アレルギー発症のキーワードは“皮膚”

しかし茶のしずく石鹸事件のおかげでこれらの謎が一気に解けました。

 

「赤ちゃんの荒れた皮膚から侵入したアレルゲンにより赤ちゃんは食品アレルギーを発症する」

 

つまり、この事件によりアレルギー発症には「皮膚」が大きな役割を果たしている、ということがわかったのです。以来いろいろな研究が進められました。

一番有名な研究は国立成育医療研究センターが2014年に発表したもので、「生後すぐから保湿剤を使用して皮膚を保護した群は保湿剤を使わなかった群に比べてアトピー性皮膚炎の発症率が30%下がった」(※)という研究です。

これは皮膚を荒らしたまま放置するとアレルギー発症のリスクが上昇する、ということを表す研究結果です。

咲くらクリニックではこの研究結果を元に、湿疹で来院される赤ちゃんには積極的なお薬の使用によるシビアな皮膚コントロールを提唱しています。

※:国立成育医療研究センター(2024年)「新生児への保湿剤の塗布はアトピー性皮膚炎の発症を予防する」

2歳までがアレルギー発症を抑えるゴールデンタイム

すなわち、1日たりともザラザラした荒れた皮膚のまま放置しない、という指導を行っています。特に免疫システムが十分に出来上がる2歳までの皮膚の治療はアレルギー発症を抑えるという点で大変重要であると考えています。

アレルギーの発症をブロックする意味で皮膚のコントロールが重要であるのは上述の通りですが、すでにアレルギーを発症している患者さんでも湿疹の皮膚をコントロールすることでアレルギー症状を軽減させることができうることが様々な研究から示唆されています。

 

「赤ちゃんのザラザラ肌は病気の肌。1日たりとも放置しないで。」

 

これが当院の合言葉です。2歳くらいまでの少しの治療がアレルギー発症を抑えてくれる可能性があるのです。ほんの少しの治療を怠ってしまって、もしもアレルギーを発症してしまったら大変。今後10年、20年とアレルギー症状は続いてしまいます。

お母さんたち、お子さんのために今だけ少〜しだけ頑張ってみてはどうでしょうか?

まとめ

皮膚のアレルギー症状でお悩みの方は、ぜひ当クリニックまでご相談ください。

最近はインスタへの投稿の方が多いので、こちらもぜひご覧ください。

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